健康な人では、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンがしっかり働き、血液中のブドウ糖を細胞に送り込んでエネルギー源にしたり、あるいは脂肪やグリコーゲンという物質に変えて蓄えたりします。しかし、このインスリンが足りなくなったり、足りていてもうまく細胞に作用しなくなったりした状態になり、ブドウ糖(血糖)を上手に細胞に取り込めなくなり、血液中のブドウ糖が増える状態が、糖尿病(耐糖能異常)です。血液中のブドウ糖の濃度が高い状態が慢性的に続くと、全身の臓器に悪い影響が及んできます。
糖尿病は、大きく「1型」と「2型」の2種類に分けられます。
*当院では、糖尿病の重要な指標であるHbA1cが、最も正確な方法で、受診時に測定できますので、検査結果を迅速に治療方針に反映することができます。
治療としては、食事療法と運動療法を重視しております。2016年1月からは、管理栄養士にも来ていただいて、予約制で栄養指導できる体制を整えます。また、院長も健康スポーツ医を取得予定で、より皆様の健康状態に即した運動指導ができるように精進しております。また、薬物療法を行うにあたっては、最新の医学知識に基づいて、本人の体質に合った治療を提案します。
当院では、インスリン、GLP-1製剤の注射も対応可能です。
1型糖尿病
インスリンを産生する膵臓(すいぞう)の細胞(膵β細胞)が、ある時から壊れていき、インスリンが分泌されなくなってしまう病気です。原因ははっきりとはわかっていませんが、その多くが免疫系の異常により自らの細胞が攻撃される「自己免疫」によるものと考えられています。
1型糖尿病では、血糖を下げるホルモンであるインスリンの分泌が極度に低下するか、ほとんど分泌されなくなるため、血中の糖が異常に増加し、重篤な症状を引き起こしかねません。発症時にのどが渇く、尿が多くなる、急激にやせるなどの症状があらわれてきますので、その時にすぐに治療を受ける必要があります。
1型糖尿病の治療
1型糖尿病の治療は、足りなくなったインスリンを適切に外から補充することです。健康な人のインスリン分泌は、食事と関係なく分泌されている、生命活動に必要な基礎インスリンの部分と、食事と血糖の変化に応じて分泌が増える、体に入ってきたブドウ糖を効率よく細胞内にとりこませる追加インスリンの部分があります。1型糖尿病の人は、1日数回血糖測定を行いながら、1日1回の持続型インスリンの注射と、1日3回の超速効型インスリンの注射を併用して治療します。治療の副作用で注意することは、食事の時間や量、インスリンの量などの影響により低血糖を起こす可能性があることです。そのため、ブドウ糖などを常備しておく必要があります。逆に、食事があまりとれないときに、勝手にインスリンを全部中止してしまうと、逆に高血糖になって、状態が悪化することもあります。インスリン量の調整は、医師と相談して行うようにして下さい。
もちろん、1型糖尿病の方でも、太ってしまうとインスリンの効果が薄れてしまいますので、適切な食事療法や運動療法も必要です。
2型糖尿病
インスリン分泌は、ある程度保たれていても、肥満などによりインスリンの効きが悪くなっている場合、あるいは、食事の量や血糖上昇のタイミングにあうだけのインスリンが十分に分泌されない場合は、2型糖尿病に分類されます。日本人に最も多いタイプ(95%以上)の糖尿病で、加齢や遺伝的要因のほか、食べ過ぎや運動不足、肥満、ストレスなどが要因とされています。
2型糖尿病の治療
2型糖尿病の治療は、食事療法、運動療法、薬物療法です。そのうち、食事療法と運動療法(生活習慣の改善)が2本の足で、薬物療法が杖のようなものです。食事療法と運動療法を行うだけで正常値になる患者様もいらっしゃいます。糖尿病が進行したケースだったり、食事・運動療法だけでは血糖値がうまく下がらなかったりするような場合には、内服薬による治療やインスリン療法を行うことになります。ここ数年で、糖尿病治療薬もいろいろな種類の物が出るようになり、治療の選択肢は増えてきています。当院では、その方の体の状態、生活パターンなどにあわせて、適切な治療を提供していきます。
糖尿病は現在のところ、病気そのものを完治させることはできませんが、血糖値を正常に保ち、糖尿病による合併症(目、神経、腎臓の合併症)を起こさずに健康を維持することは十分に可能です。
こんな症状のある方には受診をお勧めいたします
- ・健診等で血糖値の異常を指摘された
- ・このごろ目立って太ってきた
- ・ひどく喉が渇く
- ・尿の回数が多く、量も多い
- ・尿の臭いが気になる、泡が目立つ
- ・手足が痺れる
- ・視力が落ちてきた
- ・足がむくむ
糖尿病の三大合併症
糖尿病の一番怖いところは、きちんとコントロールしないと、血液中に溢れたブドウ糖が血管にダメージを与え、いろいろな合併症を招くようになることです。糖尿病は、動脈硬化による狭心症や脳血管障害の合併症の確率を増やします。また、細小血管障害による糖尿病特有の合併症には、糖尿病性網膜症や糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症などがあり、この3つを「糖尿病の三大合併症」と言います。
- 糖尿病性網膜症(目の合併症)
- 目の内側には、網膜(もうまく)という膜状の組織があり、光や色を感じる神経細胞が敷きつめられています。高血糖の状態が長く続くと、ここに張り巡らされた血管が動脈硬化による損傷を受け、視力が弱まります。進行してしまうと出血や網膜剥離を引き起こしたり、なかには失明に至ったりするケースもあります。また、白内障になる人も多いと言われます。
糖尿病性網膜症は、かなり進行するまで自覚症状が無いことも多いので、「まだちゃんと見えているから大丈夫」といった自己判断は禁物です。糖尿病の人は、目に特別な異常を感じていなくても定期的に眼科を受診し、眼底検査などを受ける必要があります。 - 糖尿病性神経障害
- 主に足や手の末梢神経が障害されます。その症状の出方はさまざまで、「手足の痺れ」「火傷やけがの痛みに気づかない」などです。そのほか筋肉の萎縮、筋力の低下や胃腸の不調、立ちくらみ、発汗異常、ED(勃起不全)など、さまざまな自律神経障害の症状が現れます。
- 糖尿病性腎症
- 血液を濾過(ろか)して尿を作る腎臓の糸球体(しきゅうたい)という部分の毛細血管が悪くなり、だんだんと尿が作れなくなってきます。やがては人工透析と言って、機械で血液の不要な成分を濾過し、人工的に尿を作らなければならなくなったりします。週に2~3回、定期的に病院などで透析を受けるようになるので、日常生活に大きな影響が及びます。現在、人工透析になる原因の第1位がこの糖尿病腎症です。